今回のコラムは、私の先輩を紹介したいと思います。
彼は、200年続く有田焼の老舗「弥左エ門窯」の7代目当主、松本哲さん。
2001年、6代目である父の時代に経営破綻した同社の後継を決意。
20億円もの借金を、15年かけて完済しました。
さらに、伝統工芸をリブランドし「ARITA PORCELAIN LAB」のもと、NYやパリ、ドバイなど世界に展開。
アーティストとコラボした作品が、大英博物館に永久コレクションされるなど、高い評価を受けています。
それまで都市銀行に勤めていた松本哲さんが、家業を継いだ時はまだ20代。
髭もじゃでいつもニコニコ、優しい熊おじさん(笑)という印象の彼が、なぜ、20億円もの負債を返すことができたのでしょうか?
「私は銀行員だったから、20億円という金額に、麻痺してた部分はあります(笑)
また、銀行の仕事は、正直言って面白くなかった(笑)のですが、モノづくりの仕事は面白いなあと思っていました。」
大きなお金の使い方を冷静に判断し、動かすことは経営者の大切な仕事です。
銀行で億単位のお金の流れを日常的に見ていたことで、“結果的に必要な金銭感覚を体得していた”というのは興味深いですね。
また、再建の際に力を注いだのは「ブランドづくり」だという松本さん。
「うちは技術力が高く、イイものをつくることはできていました。
しかし、カタチだけイイものを作ったとしても、すぐにマネされしまいます。
瞬間的に売れたとしても長続きしないのです。
他が真似できない技術を磨いていくことと、圧倒的に魅力的なブランドをつくっていくこと。
そこに腐心しました。」
たとえば「JAPANシリーズ」は、日本の四季をモチーフにした素晴らしい色使いと、独特の質感。
伝統的な和食器にはとても見えないカッコよさです。
10月1日に、社名をアリタポーセリンラボ株式会社に変更、本社も旗艦店としてリニュアルオープン。
レセプションにお招きいただきましたが、ショールームに併設してカフェやキッチンスタジオが。(designed by CASE)
週末でも人通りがまばらな、いわゆる地方都市の有田で、すごいチャレンジです。
リッツカールトン、ドバイのラッフルズホテル、NYトップクラスのフレンチDavid Bouleyなどで採用され、日本が誇る世界ブランドへと躍進するARITA PORCELAIN LAB!
古い商習慣が残る伝統産業で、イノベーションを起こすことがどれだけ難しいことか!
レセプションで涙ながらに挨拶をされる弥左エ門さんを見て、私も心が震えました。
《まとめ》
逆境のスタートだったとしても、最先端産業でなかったとしても、未来は決して閉ざされていない。
七代目弥左ヱ門がそのことを証明してくれた。
※2016年10月1日アリタポーセリンラボ旗艦店オープン
http://www.aritaware.com/shops/archives/6360
※アリタポーセリンラボ株式会社
http://www.aritaware.com/index.html
※株式会社CASE(旗艦店の設計)
http://www.case-style.com