COLUMN

コラム「社長の給料まる見え日記」

2017/06/15

【vol.452】“奇跡の経営”はうまくいくのか?

リカルドセムラーという経営者をご存知でしょうか。
彼が経営するブラジルのセムコ社は、かなり変わった経営スタイルで世界的に有名です。
先日、セムラー氏のセミナーが東京で開催されたのですが、料金は10万円!
著名な経営者も多く聞きに来ていました。

セムコ社の何が変わっているかというと、
・ビジネスプラン、事業戦略がない
・組織の階層がなく、組織図もない
・ビジョンや企業理念がない
・出勤時間も退社時間も自由 etc.
(「奇跡の経営」より)

一般的な企業からすると、かなり常軌を逸しています。
にもかかわらず、業績は好調。
4000万ドル(1995年)→2.5億ドル(2003年)→10億ドル(2014年)と伸ばし続けているのです。

セムコ社の経営スタイルは、従来型の「ヒエラルキー組織」に相対して「ホラクラシー組織」とも言われます。

「もし、自由に社員に任せた方が経営がうまくいくなら、そうしたい!」
という経営者は多いでしょう。
しかしこのホラクラシー経営、失敗事例もたくさん耳にします。

なぜ真似をしようとしても上手くいかないのか?
講演でセムラー氏の話を聞いて、私にはその理由が良くわかりました。

『経営スタイルを変えたい』と考えた時、そこには何らかの理由や目的がありますよね。
もっと業績を上げたい。
描くビジョンを実現したい。
社員の自主性や生産性を高めたい。etc.

経営者が目的を果たすために、“手段”としてホラクラシー的制度を取り入れる。
これが失敗のもとだったのです。

セムラー氏は「経営をよりよくしようと思って制度を取り入れるのではなく、制度を決める権利自体を経営者が手放すことが大事」だと言います。

どういうルールや制度をつくるのか。どんな人事配置をするのか。
それを経営者が決めずに、社員に委ねるというのです。

さらに「会社を定義しない。存在意義も考えない」と言います。

経営者が起業する際、無目的に会社をつくることはありません。
何かしたいことや手に入れたいことがあるから、会社を作るのです。
セムラー氏は、その目的すら手放すというのです。

セムラー氏は非常に哲学的に経営を考えていて、彼の経営哲学は、一般的なそれとは根本的に違うのだ、と感じました。

《まとめ》
ホラクラシー経営を取り入れる、とは「売上を伸ばしたい」「会社を大きくしたい」といった欲求を一度リセットするということ。
経営者が自分の欲求を満たすために、手法をいいとこどりしようとすると、上手くいかない。

※「奇跡の経営」一週間毎日が週末発想のススメ
リカルド・セムラー著(総合法令出版)

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