COLUMN

コラム「社長の給料まる見え日記」

2016/01/21

【vol.386】おすすめ本「自分を磨く働き方」

SMAPの解散騒動。新年早々大ニュースですね。
すごい視聴率を叩き出した18日の本人たちの謝罪映像。
あの内容に違和感を感じている人は多いと思いますが、何がそう感じさせるのでしょうか?
ジャニーズは、SMAPは、今後どうなっていくのでしょうか?

そうしたことを考えた時に、この本が頭に浮かびました。

著者の安田佳生さんは、(株)ワイキューブの経営者だった方であり、私の元上司です。
2011年にその会社が経営破綻し、すべての財産を失い、
「会社を経営することの意味」「働くことの意味」「生きることの意味」
を完全に見失っていたという安田さん。

『過去を引きずり、他人を妬み、社会を否定しながら生きていた3年間でした。
でも、その呪縛から解放されたとき、「生きること」と「働くこと」の本当の意味が見えてきたのです。』(まえがきより)

本書では、3年間の葛藤のプロセスが、リアルに描かれています。
昔から“経営者”というより“思想家”と言った方がしっくりくるような、考えて、考え抜くタイプの安田さん。
なぜ潰れたのか?という問いから、資本主義の本質にも迫ったりと、縦横無尽に“安田節”が炸裂。

「よくそこまで考えられるよなあ、スゴい!」という驚きと「わ、こじらせてるなあ…」という面倒臭さ(笑)との絶妙なバランス。
安田さんにしか描けない世界観が詰まっていて、とても面白いです。

私が特に共感したのは「なぜブラックといわれる店に、社員だけでなく客も集まらなくなったのか?」というくだりです。

『社会が豊かになるにつれ、日本人は損得よりも、好きか嫌いかで物事を選ぶ人が多くなった。
~中略~
社員の報酬を下げるという犠牲によって、おいしいものが安く食べられるというメリットが享受できるにもかかわらず、顧客はそのような店を敬遠し始めている。
社員の犠牲によって生まれる「得」よりも、社員を犠牲にする会社に対する「嫌い」が勝ってしまったのである。』


SMAPの放送での違和感。
それは、“社内”の騒動に経営トップが出てこず、また“社員”からトップに対しての謝罪を、公の場でさせる非常識さ。

“好きな仕事を楽しそうにやり続けている代表”だったはずのSMAPが、
「結局、彼らも会社の言いなりなんだ・・・」
「嫌々、組織に残らざるをえないんだろうね・・・」と思わせてしまう空気感。

社員(SMAP)を犠牲にしてしまうジャニーズという会社に、多くの人が“ブラックといわれる店”に抱くような「嫌い」を感じたはずです。

アイドルを夢見る全国の少年たちも「ジャニーズには入りたくない」と思ったでしょうから、会社の行く末は厳しくなるはずです。


「自分を磨く働き方」という題名。
これは以前ベストセラーになった「1000円札は拾うな。」と比較するとあまりに地味です。
しかし、安田さんならではの、物事を切り取る視点は変わらぬ切れ味。
経営破綻を通じての思索は、むしろより本質的に深まっています。

これからの会社経営のあり方や、リーダーのあり方について考えるヒントが欲しい人に、強くオススメしたい一冊です。


※「自分を磨く働き方」安田 佳生著(フォレスト出版)