COLUMN

コラム「社長の給料まる見え日記」

2018/05/31

【vol.496】台湾で見たスゴい仕事。

太宰府天満宮に麒麟の像があります。
麒麟は中国の空想上の動物で、頭は狼、胴体は鹿、足は馬、尻尾は牛と、それぞれの生き物の一番美しいとされるパーツが組み合わさっています。

先日台湾に行った際に、この麒麟像の複製の銅像を見る機会がありました。
この複製は世界で唯一のもので、いままで一度も複製することを許されなかったので、許可を得るのに大変苦労したそうです。

複製が許されない理由に、複製をつくることの難しさがあると聞きました。

麒麟像は、150cmと大きく、また髭や身体に細かく描かれた模様など、複雑な造形をしています。
それを複製しようとすると、髭の一本ずつ、また模様も寸分違わず真似ることに力を注がねばなりません。
そっくりに造形できる高い技術もさることながら、情熱が真似ることに分散してしまい、命が吹き込まれづらいというのです。

オリジナルの場合は、作家の想いや情熱をそのまま造形に注ぎ込むことができる反面、複製は仮に見た目が同じだとしても、“本物以上”にはまずならないのだと。

また、そうした複製をひとつ許せば、価値が劣化したものがどんどん出回ってしまうリスクがあるのです。

台湾の銅像は、日本最高レベルの銅像作家に依頼をし、2年がかりで製作されたそうです。
それはとても素晴らしい作品でした!が、私には正直言って本物との違いはよく分かりませんでした。
ただ、太宰府天満宮の宮司や複製を依頼した台湾の経営者など、わかる人には見える世界があるのでしょう。
そして、その違いは目には見えないけれど、極めて大事な価値なのだと。

「複製の銅像」という一言からは計り知れない、命のやりとりが垣間見えるような、仕事の凄みを見た思いでした。

《まとめ》
一流の仕事には、命が吹き込まれている。

Photo by Toshio Ozawa