COLUMN

コラム「社長の給料まる見え日記」

2019/03/25

【vol.533】ティール組織をスポーツでたとえてみると~あなたの会社は“何部”ですか?

なぜか野球部出身は採用しない、元プロ野球選手の経営者

 

以前、経営者が元プロ野球選手という、異色の経歴を持つクライアント企業がありました。

しかもユニークだったのが、「野球経験者は採用しない。」と決めていたことです。

 

「プロまで経験したからこそ、わかるんですけどね。

野球の世界は強豪校になるほど、監督が絶対なんです。選手はサイン通りに動くことを求められます。だから“優秀な指示待ち人間”が出来やすい。

 

いままで何人も野球経験者を採用したんですが、指示命令へのリアクションは最高です。

私の言うことに忠実に従ってくれます。

言った通りに動いてくれるから、社長として気分はいいんですけどね(笑)

 

ただ…自分の頭で考えて行動することが、苦手なんです。

言われたことしかできない。創意工夫ができない。

それでは“強い組織”にはならないと考えて“野球部禁止”にしました。」

 

一般的には「体育会系=鍛えられているイイ人材」という認識がありますから、その経営者の話はとても印象深かったです。

 

ヒエラルキーが指示待ち人間を生む

 

さて、昨今話題のティール組織など“次世代型組織”の登場の背景には、上記の話とつながるところがあるなあと感じています。

 

ほとんど全ての企業が採用している、階層型のヒエラルキー組織は、スポーツにたとえると、“高校の野球部”型だといえます。

 

試合では、ひとつのプレーごとに、監督(リーダー)からサイン(指示命令)が出されて、選手(部下)はそれに従って行動する。

 

前提となるスタンス(監督の心の声)は…

 

『選手(部下)はまだ高校生で未熟だし、野球にも精通していない(スキルが低い)。

管理しないと練習(仕事)をしない。

監督(リーダー)が最も優秀なのだから、指示命令を徹底した方が、勝利(目標達成)を得られる。』

 

といったところでしょうか。

 

確かに、高校野球において結果を出そうと考えるならば、上記のスタイルは理にかなっています。

 

実際に、甲子園に出場するような強豪校の大半は、そうしたスタイルでしょう。

 

ただし…

この管理型スタイルが通用するのは、野球が“ゆっくり行われるスポーツ”だからです。

 

ピッチャーが一球投げるごとに、サインを確認する余裕がある。ワンプレーごとにインターバルがある。

イニングごとに攻守が入れ替わる時間が取られているし、ベンチでは話す選手同士やコーチと話す機会もある。

 

だから、指示命令型のチーム運営が可能なのです。

 

変化のスピードが速い現代に適したチームづくり

 

企業も、同じです。

いまと比較すると、昔は変化のスピードがゆっくりでした。

また、大量生産するメーカーのような業態にとっては、ピラミッド型で、社員を画一的に管理する組織の方が相性が良かったのです。

 

しかし、いまは世の中の変化のスピードが速い。

顧客の嗜好の変化。多様化。

劇的に生産性を高めてくれるアプリやサービスの対応。

次々と誕生する革新的な競合企業への対策。

 

いちいち立ち止まって、リーダーの指示を仰ぐ、などという余裕はありません。

また、リーダーも“万能”で“最先端”な訳ではない。

 

企業の役職者の大半は“過去に成功体験を積み重ねてきた人”です。

新しいことへのチャレンジや未来への決断が、素早く、精度高くできる能力を持っているかどうかは、別問題です。

 

いま、私たちがどんなチームづくりをすればいいのかと考えると・・・

 

スポーツでたとえた時に、私たちの競技種目が、野球からラグビーに変わったと考えてみてはどうでしょうか?

 

ラグビーは試合中、攻守が激しく入れ替わりながら、切れ目なく動き続けます。

プレー中、選手一人ひとりは、いちいち監督のサインを確認している暇がありません。

監督も、試合中は観客席から見ているだけ。

選手の自主性に任せるしかありません。

選手一人ひとりは瞬時の判断と意思決定を行い、チームとして有機的に連動し、ゴールを目指します。

 

ティール組織のような次世代型組織は、ラグビー部のようなチームをつくろうという発想なのです。

 

あなたの会社は、どのスポーツ大会で勝負している?

 

★上下の関係ではなく、役割分担。

★指示する人と動く人、ではなく、全員が主体的に考え、判断し、行動する。

★相手によって柔軟に対応を変化させながら、チームとしてのパフォーマンスを追求していく。

 

次世代型組織のポイントは、そうした点にあります。

 

ただし私は「全ての企業が次世代型組織になるべきだ」と言いたい訳ではありません。

業態や地域、自社の現状によっては、管理野球型のチームの方がいいケースもあります。

 

ヒエラルキー組織とティール組織。

どちらがいいとか悪いとかの問題ではなく、自社に合ったチームづくりを選択するべきなのです。

 

考えてみてください。

 

もし、自社が参加している“大会”の種目が、野球ではなくラグビーだったとしたら…?

にも関わらず、高校の野球部のような体制で、ラグビーの試合を戦っているとしたら…?

 

はたして勝てるでしょうか?

難しいですよね。

 

次世代型組織では「上下関係がない」とか「管理しない」といったキーワードが先行し、「ほんとうにそんなことができるのか?」と不安を感じている人も多いでしょう。

 

しかしスポーツの世界に置き換えてみると、ラグビーやサッカーでは高校生だろうと(試合中は)セルフマネジメントが機能しているわけです。

 

企業でも、できないはずはないのです。