COLUMN

コラム「社長の給料まる見え日記」

2018/11/01

【vol.516】いま話題の『ティール組織』とは?5分でざっくりわかるようにまとめてみた

日本語を含め17カ国語に翻訳され、累計35万部を突破するベストセラーとなっている『ティール組織』。
「日本の人事部[HRアワード2018]」でも優秀賞を獲得した、2018年話題の一冊です。

ただ……私の周りで“読破したよ”という人は数少ないです。
600P近い大著なので「気にはなってるんだけど、分厚くて読めない……」という人が大半かと思います。

そんな方のために
「この本には、何が書かれているのか?」
「なぜ話題になっているのか?」を“超訳”としてまとめました。

この本に書かれているトピックは、2つです。

【1. 組織の“進化の歴史”を書いている】

「組織モデルは、人類が文明を持ち始めたころから、歴史の中で徐々に革新を続けてきた。」
という視点が斬新。

そして現在、世界中の民間企業で多く見られる組織モデルを「達成型組織(オレンジ)」と命名。
業績目標があり、それを合理的かつ効率的に達成していくことを目指すモデルです。

会社が業績目標を定め、数値で落とし込んでいく。上司は部下やチームを管理するのが仕事という組織形態。
(私たちにとっては当たり前ですよね。)
効率的・合理的であることが大事なので、マネジメント上、個性の尊重や個別対応はしづらい。
なぜなら、会社の指示通りに機械のように動いてくれることが、効率よく達成に近づくからです。

著者フレデリック・ラルー氏は、マッキンゼーというロジカルの権化のような企業に在籍していたのですが、その経験もふまえて“既存の組織が限界を迎えているのではないか?”と、この本で問題を提起しています。

【2. ユニークな組織モデルで急成長している企業の共通項を発見】

著者は世界中の企業をリサーチします。すると
「すごく急成長しているのに、従来のピラミッド型ではなかったり、上下関係も、予算も、売上目標もない。」
といった組織が、世界中にチラホラと存在しているのを見つけました。

そうした組織を研究してみたところ、3つの特徴があることを発見。
それを著者は「進化した組織」(ティール組織)とくくったのです。

3つの特徴は以下のとおりです。

【ティール組織の特徴(1):セルフマネジメント / 自主経営】

一言でいうと『まかせちゃう。』ということ。
上司の指示や命令がなくても、各々が自主的に判断して行動する。
そもそも、上司的な立場の人が存在しない。

「管理しないとサボっちゃうのでは?」
「任せたとして、何かあった時に誰が責任をとるんだ?」
という私たちの常識が揺さぶられます。

【ティール組織の特徴(2):ホールネス / 全体性】

これは『ありのままでいる』ということなのですが……
イメージが湧きづらいですよね。

社会通念では “会社は仕事をする場所” であり “社員としての立ち振る舞い” が求められます。

わかりやすい例が、2017年の熊本市議会でのエピソード。
ある女性市議が生後7か月の赤ちゃんを連れて市議会に出席しようと試み、騒動になりました。

「職場は仕事をする場所。家族やペットの面倒を見る場所じゃない」という固定観念があるわけです。
育児、介護、好きなファッション、趣味 etc. 仕事に不要なものは「プライベート」として切り分ける。
就業時間に合わせてプライベートをやりくりし、勤務時間中は仕事最優先。

これはある意味、当然なのです。
“達成型組織”において、会社は個々の社員の人生より、達成のほうが大事なのですから。

しかし、自分の一面しか出せないよりも、安心してありのままの自分をさらけだせる環境の方が、パフォーマンスが高まるのではないか?というのがティール組織における考え方なのです。本書では、子供やペットを連れて出社する企業が紹介されています。

【ティール組織の特徴(3):存在目的】

これは非常に哲学的なのですが……。
ひとことでいうと『なんのために?』です。
既存の組織は、目標設定が大前提です。

しかし「あなたの会社では、なんのために目標を達成するのですか?」
「そもそも、あなたの会社はなんのために存在しているのですか?」
と“目的”を聞かれた時、答えられる人がどれくらいいるでしょうか?

たとえば飲食業なら「美味しいお酒と食事で、お客様に楽しいひと時を過ごしてほしいから」
たとえば住宅会社なら「家族の絆がもっと深まるような家をつくってあげたい」
といった、そもそもその事業を行なっている目的がある(あった)はずです。

しかし、それがいつの間にか「1店舗の年商3億円。今年は10店舗出店」という目標に置き換わったり、
「5年後に売上を10倍にして一部上場を果たす」となったり。
数値目標を達成することが、日々の仕事の目的になってしまいがちです。

目標とは、未来のことです。しかし本当に大事なのは
「なんのために、今日、この仕事をしているのか?」
ということが一人ひとりに共有されていることが大事なのでないか?
「目的が明確であれば、当然意欲も高まるしパフォーマンスも高まるだろう」
というのがティール組織における考え方です。

本書における「存在目的」を私なりに解釈すると
『なんのために?を忘れず、今を生きること。目の前の仕事、お客様に全力で向き合う』ということです。

高い数値目標を必死に追いかけるよりも、今目の前のお客様に全力で向き合うことを積み重ねた方が、結果的に業績に跳ね返ってくるよね、というスタンスなのです。

「まあ、理屈はわかった。でも、そんなこと本当にできるのか?」
という私たちの素朴な疑問に、著者は社名を明らかにしながら実例を挙げて説明していきます。

業種はさまざまで、規模も数百人から10,000人を超える企業も。
目標をガリガリ追いかけていないのに、そうした企業以上に急成長している。
ここが、反論を黙らせる大きなインパクトです。

経営者の「業績を上げたい」という欲求に応えつつ、「組織のカタチは進化してますよ!」
と、新たな可能性を指し示している。これが本書のポイントなのです。

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もっとティール組織を知りたいという方は、ぜひこちらのYouTubeをご覧ください!

※『ティール組織』解説の嘉村賢州さんが、私のPodcastでわかりやすく解説しています。
(坂東孝浩のポイッと♪手放す経営ラボ 20~22回)
https://youtu.be/gdUVV7QsdP8
https://youtu.be/PNwur1VYgk4
https://youtu.be/bP9IdU4oMGA

※『ティール組織』は、新しい世界を見せてくれます!このまとめは入り口にすぎません。
興味を感じたら、本を読んでいただきたいですし、まだ敷居が高ければ(笑)こちらの著者フレデリック・ラルーさんの動画をおすすめします。
https://organization-laboratory.com/teal-untertitel-jp/