COLUMN

コラム「社長の給料まる見え日記」

2012/08/23

【vol.215】できるビジネスマンが、大手企業を捨てるワケ

先日、社会福祉法人を経営している方から「こんな人を採用したよ」という話を聞きました。

20代後半の男性2人で、1人はメガバンク出身、もう1人は大手重工業出身だそうです。 銀行マンだった男性は、同期300人中、トップ5に入る優秀さで、バリバリのエリートコースを歩んでいた人。重工マンも、電力担当だったそうで、花形部署にいたということはかなりの出来る人材だったと思われます。

日本を代表する大手企業の、バリバリの若手人材が、わざわざ退職してきたから、驚きましたよ!と経営者の方が仰っていました。

その社会福祉法人では、障がい者や、18歳までの子どもを対象にした施設を運営されています。給料は25万円だそうです。転職してきた彼らは、おそらく前職から大幅ダウンでしょう。

『そのまま頑張れば将来安泰だろうし、うちの給料は安いよ。なぜそこまでして来たいの?』と聞くと「いまの仕事に手応えが感じられなくって」という答えたそうです。

手応え!面白いですね!

 

学生が就職先を選ぶ際の基準で、近年上位にあがるのが「やりがいのある仕事がしたい」です。

このやりがいとは、目の前の人の役に立ったり、喜んでもらうという、“身近な手応え” のことです。「出世」や「金」や「会社を大きくする」ことよりも、確かな手応え= “グリップ感”へ、若者の価値観がシフトしているのだと、今回の話を聞いて、改めて思いました。

『この仕事を続けていて、先々、いいことがあるんだろうか?それより、今困っている人のためになにかしたり、役に立てることがしたい。』

そんな風に考える若者が、昨年の震災以降、加速度的に増えているように思います。

 

人は、何の為に仕事をするのか?

ヨーロッパでは、余暇やプライベートの為に仕事を頑張るという人が多いと聞きます。また、アジアで諸国においては “豊かになりたい!” というハングリー精神や “競争” がキーワードです。

一方、日本は物質的に豊かになりました。もはや “ハングリー精神” の勝負では、アジア各国には敵いません。しかしこれは、必ずしも憂えることではなく、ハングリー精神と引き換えに、価値観のレベルが次のステップに進化した、ということだと思うのです。

 

今後、若者の意欲にスイッチが入るキーワードは “グリップ感”。

これによって人材が高いパフォーマンスを発揮し、組織力アップ、業績向上に寄与していく。道徳心が高い日本人だからこそ可能なこのスタイルは、今後日本が世界をリードしていくカギになりえるのではないでしょうか?

こうした、“グリップ感を軸とした組織づくり” がしやすいのは、間違いなく中小企業です。組織が小さいために価値観の共有もしやすく、また自分の存在価値を社内外で実感しやすいからです。

この数年で、グリップ感に燃えうる人材の採用や、マネジメントの仕組みを確立できた中小企業が、日本とそして世界を、リードする起爆剤になっていくのではないでしょうか?!

ちなみに…

僕は金銭欲も物欲もある旧タイプ(笑)なので、この転職話を聞いた時はびっくりしました。が、よくよく聞いてみると、「奥さんも働いているので、2人の給料でやっていけますから」という話だったそうです。共働きが前提なのですね!

今後は施設の責任者として、事業を伸ばして給料も増やすというチャンスがあるということでしたが、仕事の選び方や、お金に対する価値観など、ライフスタイル全般が変わりつつあるんだなあと思いました。

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