COLUMN

コラム「社長の給料まる見え日記」

2013/03/07

【vol.242】映画さんぽ2013「遺体 明日への十日間」

私は、映画が大好きです。

見たことのない世界や、宇宙へ旅させてくれたり、会うことができない歴史上の人物との出会いを、疑似体験させてくれるからです。

また、様々な価値観を持った人、自分とは異なる境遇で生きている人を知ることができるのが、すごく楽しいのです。

先日観た「遺体」という映画も、そんな体験をさせてくれる作品でした。

舞台は、釜石市の、遺体安置所。震災直後の10日間が描かれています。

意外だったのは、“遺体” でも “遺族” でもなく、遺体安置所ではたらく人たちに、スポットが当たっていた点です。

震災直後から運ばれてくる遺体は・・・

・顔や体をふいて、最低限きれいにする。

・怪我の状況を調べ、DNAを採取する。

・歯形を調べて、記録に残す。

・番号を割り当てた後、安置する。

このような手続きを経て、遺族が探し出せる状態になります。

この一連のしごとは、誰かが行っている訳ですが、被災地では、地元の医師や役所の人、警察や一般市民が行っていたのです。

現場では、電気や水などのインフラが使用できない状態です。携帯もテレビも通じないので、情報がとれず、被害の全貌がよくわからない。命が助かったとはいえ、暖房や食事が滞ったり、家を流されていたり、自分自身が被災者だったりする。

そんな状況下で、遺体が次々と運ばれてきます。誰かが、待ったなしで対応をしなくてはならないのです。

ほとんどが、遺体に触れたこともなく、専門知識もない人達。

役所に勤めているから、とか、生き残ったから、という理由で、同じ町に住んでいた方を安置する作業を行う。

遺体安置に関わった地元の方達のことについて、私は見聞きしたことがなかったですし、思いを馳せたこともありませんでした。

仮にその立場の方達のことを想像しようと試みても、自分にそのような “引き出し” がなく、無理だったでしょう。

この作品の内容は、ドキュメンタリーも難しいでしょうし、文字でも伝わりづらいと思います。映画だからこそ、表現できた世界なのだと感じました。

主演の西田敏行さんは、インタビューで次のように話しています。『被災地に対し、一体何ができるのだろうとずっと考えていたのですが、歌手の方は「歌」で、僕は役者なので「芝居」でできることをしようと。』

この映画の収益は被災地に寄付されるそうです。

そして何よりも、この映画を観て、何かを感じることが、私にできることであり、復興支援への道につながるのではないか、と思いました。多くの人に、観てもらいたい映画です。

「遺体 明日への十日間」http://www.reunion-movie.jp/

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