この作品は、経営者におすすめです。
出光興産の創業者、出光佐三をモデルにした、歴史経済小説です。
物語は1945年8月15日、終戦日からはじまるのですが、冒頭が凄い!
当時、石油販売事業を手がけていた “国岡商店(の国岡鐵三という社長が主人公です)” は、海外に拠点展開しており、7割の社員と資産が海外にありました。
敗戦によって、海外資産は全て没収。石油供給も断たれて事業は継続できず、莫大な借金と1000名の社員だけが残るという状況になります。
その、超マイナスな状態から再起を目指す社長の国岡鐵三は、当時60歳!
なんと、1000名の社員を1人も解雇しないという決断をします。
信じられません・・・。
そこから、今日の出光興産に至る過程が描かれているのですが、その過酷さは、想像を絶するものです。
この作品の読みどころは、ひとつには物語を通じて、リーダーのあり方、決断の凄まじさに圧倒される点です。
そして、もう1つのポイントは、「石油」です。
石油は今日、なくてはならないものであることは、間違いありません。しかし、あるのがあまりに当たり前だし、次世代エネルギーへの移行が注目される中で、なんとなく斜陽なイメージが、私にはありました。
しかし、近現代の世界の歴史とは、つまるところ各国の石油の覇権争いだったのだ、ということを、この作品を通して学ぶことができます。
日本の経済発展に不可欠であった、石油の安定供給。その実現のために、国岡鐵三のとった行動の数々は、圧巻です。
読み終えた後は、出光以外で給油できなくなります(笑)
この作品の著者は「永遠の0(ゼロ)」を書いた百田尚樹さんです。戦前戦後の男の生き様を、ぶっとく、熱く、美しく表現される方ですね。
ハードカバーのみで、分厚い上下刊ですが、あっという間に読めます。というか、止まりません!
魂が鼓舞され、勇気が湧いてくる作品です。
『海賊とよばれた男』【上・下】百田尚樹著(講談社)
http://www.bookclub.kodansha.co.jp/books/topics/kaizoku/