「『出版社をつくるなんて無謀だ。商売として成り立たない。』
と、周りから散々言われましたよ。」
今年、ぼくら社という出版社をつくり、編集長となった安田佳生
さん。設立の経緯を聞くと、こんな話をしてくれました。
「本が読まれなくなって、出版不況だと言われるけど、
読まない理由は、本の作り方にあるんじゃないかと。
たとえばビジネス書。一冊の中で言いたい事が書かれているのは
全体の2~3割だったりする。でも、それでは本として成り立た
ないから、文章を水増しせざるをえない。
そうなると読むのが億劫になるし、言いたい事も伝わりづらく
なってしまっていると思います。
本当に伝えたいエッセンスを、分かりやすく伝わりやすいように
工夫すれば、読みたいという人は増えるのではないか?
そうして“読むきっかけ”を作る事ができたら、ぼくら社の本を
買い続けてくれるんじゃないかと思ったのです。」
安田さんの「いい本の定義」は、“ターゲットと伝えたい
努力が明確で、伝える努力がきちんとなされている”こと
だそうです。
「いい本づくりにこだわりたいから、月一冊しか出版しないと
決めている」と安田さん。
一般的な出版社では、1人の編集者が月何冊も担当しているところ
を、ぼくら社は5人がかりで月一冊つくる、と。
すごーく非効率ですね(笑)
「疑問論」は、編集長自らが執筆した、ぼくら社の一作目です。
ベンチャー企業を創り急成長させて、自己破産した“元経営者”
で、現在は“境目研究家”を名乗っている安田佳生さん。
☆自由であるというのは何者にも束縛されない状態ではないと
思うのです。たとえば無人島で何者にも束縛されないことを
自由とはいわない。やはり自由というのは、自由と不自由の
境目を自分でコントロールできることではないでしょうか。
☆性格の悪さを自覚している性格の悪い人と、性格の悪さを
自覚していない性格の悪い人。世の中にはその二種類の人間
しかいないと考えるべきだ。~
☆世の中にはお金に換えていい物とお金に換えていけない
物がある。プライドを捨てて客に頭を下げ、面白くもないのに
上司の話に作り笑いを浮かべる。それっていいんですかね。
私たちは日常でお金に換えていけない物をお金に換えて
生きてるのではないか。
といった感じで、疑問に感じた事について自身の考えが
書かれています。
こういうことって・・・普通は考えませんよね(笑)
でも、誰かが膨大な時間を費やして考えてくれると、
「自分だったら、どう考えるかなあ?」と考える
きっかけをもらえる。
そう、この本は、ビジネス書でもエッセイでも自己啓発書
でもなく、自分の思考を鍛える“テキスト”なのです。
正直、題名が微妙だし、表紙が目立つ割にカワイくないので
持ち歩きにくいですが…(笑)中身は濃密で、刺激的です!
安田さんは個人的な知り合いですが、義理を通して、という
訳ではなく、オススメしたい一冊です。
『疑問論』安田 佳生著(ぼくら社)