COLUMN

コラム「社長の給料まる見え日記」

2014/03/06

【vol.292】映画さんぽ2014「家路」

3月1日から公開されている、震災後の福島を舞台にした
映画を観てきました。

原発事故で避難指示が出された地域に家がある、家族の物語。
音信不通だった弟が、20年ぶりに戻ってきて、立入りが禁止
されている生家でひとり自給自足の生活を始める…。

立ち入り禁止地域は、今でも人が住むことが許されていません。

Q. “陸の孤島” のようになった、その地域の中が、今どんな
様子なのか?

Q. また、その地域に家があった人たちの生活や、気持ちは、
どうなっているのか?

そうしたことを、知りたいという気持ちはあります。
しかし、実際に見にいくことは出来ないし、住んでいた人に
興味半分で質問する訳にもいきません。

ならば、ドキュメンタリーやニュースを見ればいいので
しょうが、ちょっとリアル過ぎたり、ある一面だけが
脚色され過ぎたりしているような気がして、少し気が
引けてしまうのです。

この映画は、そんな自分にもしっくりなじむ内容でした。

「家路」の撮影は、実際の立ち入り禁止指定区域でも行われて
います。(禁止が解かれた後初めて撮影した映画だそうです)
また、仮設住宅も実際のものを使用。全シーンのうち9割が
福島県内で撮影されています。

その点で、映像のリアリティはとても高い。しかし一方で
ドラマなので、言葉を選ばずに言うと “安心して見る” ことが
できるのです。

監督の久保田直さんは、
「そこに生きている人たちの等身大の部分を、どろどろとした
ところを含めて立体的に伝えたいと思った」と語っています。

その言葉どおり、どこにでもある家族の姿が、
淡々と描かれています。

震災のようなテーマを、メッセージの押し付けもなく、
過剰な演出をせずに表現するのは、かなり難易度が高い
ことだと思います。

家族をテーマにしたドキュメンタリーを30年作り続けてきた
という久保田監督。そして松山ケンイチや内野聖陽など、
実力のある俳優陣との組合わせだからこそ実現できた、
この作品の絶妙なバランス感覚。

震災後の “家族や人の今” を知ることができる、そのために
2時間を費やす価値のある作品だと思いました。

「家路」
http://www.bitters.co.jp/ieji/

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