COLUMN

コラム「社長の給料まる見え日記」

2015/10/08

【vol.372】閉店でファンが増える店。

これは、あるお店の閉店のお知らせです。

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十七代 黒川光博より 赤坂本店をご愛顧くださったみなさまへ

赤坂本店、および虎屋菓寮 赤坂本店は、10月7日をもって休業いたします。
室町時代後期に京都で創業し、御所御用を勤めてきた虎屋は、明治2年(1869)、東京という全く新しい土地で仕事を始める決断をしました。
赤坂の地に初めて店を構えたのは明治12年(1879)。
明治28年 (1895)には現在東京工場がある地に移り、製造所と店舗を設けました。

昭和7年(1932)に青山通りで新築した店舗は城郭を思わせるデザインでしたが、昭和39年(1964)、東京オリンピック開催に伴う道路拡張工事のため、斜向かいにあたる現在地へ移転いたしました。
「行灯 (あんどん)」をビルのモチーフとし、それを灯すように建物全体をライトアップしていた時期もありました。
周囲にはまだ高いビルが少なかった時代で、当時大学生だった私は、赤坂の地にぽっと現れた大きな灯りに心をはずませたことを思い出します。

この店でお客様をお迎えした51年のあいだ、多くの素晴らしい出逢いに恵まれました。
3日と空けずにご来店くださり、きまってお汁粉を召し上がる男性のお客様。
毎朝お母さまとご一緒に小形羊羹を1つお買い求めくださっていた、当時幼稚園生でいらしたお客様。
ある時おひとりでお見えになったので、心配になった店員が外へ出てみると、お母さまがこっそり隠れて見守っていらっしゃったということもありました。
車椅子でご来店くださっていた、100歳になられる女性のお客様。
入院生活に入られてからはご家族が生菓子や干菓子をお買い求めくださいました。
お食事ができなくなられてからも、弊社の干菓子をくずしながらお召し上がりになったと伺っています。
このようにお客様とともに過ごさせて頂いた時間をここに書き尽くすことは到底できませんが、おひとりおひとりのお姿は、強く私たちの心に焼き付いています。

3年後にできる新しいビルは、ゆっくりお過ごしになる方、お急ぎの方、外国の方などあらゆるお客様にとって、さらにお使い頂きやすいものとなるよう考えています。
新たな店でもたくさんの方々との出逢いを楽しみにしつつ、これまでのご愛顧に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

虎屋17代
代表取締役社長 黒川光博
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17代トップの想いや感謝の気持ちがすごく伝わってくる文章ですよね。
この本店には行ったことはありませんが、ぐっときてしまいました!

これを読んで思い出したのが、8月末で改装のために閉館したホテルオークラ東京です。

1962年に建てられた本館は、「モダニズム建築の名作」と言われファンが多く、改装が決まった後は「なくならないで、私のオークラ!」という特集記事が組まれるほどの盛り上がりでした。

私は改装前にそれを体感しておきたいと思い、8月末に宿泊をしました。
ロビーには見学者と思われる方がたくさん!
改装を惜しんで宿泊する人も多かったと思いますが、特にホテル側からのメッセージは見当たりませんでした。

肩すかし、という訳ではないのですが…
もしオークラの支配人の想いが伝わってきたり、従業員の方々と思い出などを共有することができたら、満足度が全く違っただろうなあと思いました。

ちなみに現在、webサイトでは下記のお知らせが掲載されています。

別館単独営業を開始いたします「ホテルオークラ」
http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/news/2015/2563/

虎屋も、ホテルオークラも、2020年の東京オリンピックを見越した投資なのだと思います。
しかし同じ目的であっても、両者の発信するメッセージによって、「せっかくのいい建築を、儲けのために壊しちゃうんだね」と思われるのか「改装後が楽しみ。絶対行きたい!」と思われるのか。
期待度、ファン度に、格段の差が出ると思いました。

《まとめ》
人は、物語にこそ共感する。

▼虎屋のお知らせ
https://www.toraya-group.co.jp/toraya/news/detail/?nid=76
▼なくならないで、私のオークラ! MY MOMENT AT OKURA

ジャパニーズ・モダンの最高峰 オークラ本館の魅力をじっくり研究してみましょう。


▼ジャパニーズ・モダンの最高峰、オークラ本館の魅力をじっくり研究してみましょう。

〈ホテルオークラ東京〉建て替えに、世界中から続々エールが!「なくならないで、私のオークラ」


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